王位への君臨

「敗因はわからない」
去年は悔しさの残る年であった。

シニア級初戦を勝利したまでは良かったがG1大阪杯では自分のレースをすることが出来ず3着。続く安田記念でも直線の伸びを欠いて7着。
半年後の天皇賞・秋では直線で全く力が入らずにズルズルと後退。12着殿負けを喫してしまった。
「どうして…どうしてG1を勝てないの…」苦悩の日々。期待に応えられない自分にコンプレックスを抱く日もあった。

でも、同期で新馬戦で一緒に走ったカレンブーケドールはG1どころか重賞すら勝てていないが、彼女は常に一生懸命だ。その必死な姿に、多くのファンが声援を送っている。


そうか、僕は走らなければいけないんだ。
誰かもわからないファンがいる。両親やお世話になった多くの人が、僕を応援しているんだ。
だから、僕は歩みを止めてはならないんだ。
「彼はもう終わった」など心無い言葉をかける人もいるかもしれない。しかし、それ以上に多くの温かい声援があるではないか。
結局、あの天皇賞はなぜ負けたのかは分からない。でも僕は常に前を向いて走り続ける。

2021年6月6日 日曜日 東京レース場
伸びたターフの葉の1本1本が靡いている。
最速牝馬や新世代の快速ランナーといったライバルは強力だが、それでも僕は声援に応えるために、走り続ける。

今こそ、戴冠の時─────